2009年11月29日

アンジェラのこと

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わたしの名前はアンジェラ。今朝は早く目が覚めた。どことなく、明るく、太陽の光のあたたかさが、アンジェラの気持ちを現しているような朝だ。
今日は病院に行く日だ。そして、土曜日は午前中に済ませなければならないことが、たくさんある。その一つが、市場に行って、一週間分の野菜と果物の買い物をすることだ。
わたしの家はジョルジョ・ヤン通りにある。エンジニアだった父の代から住んでいる。この短い通りは、20世紀のはじめに建設され、建物は当時のモダンなものだ。わたしの家は地上階で、30メートル四方の庭がついている。庭の周囲にはぶどう、柿の木、白い花の咲く泰山木がある。そして、中央には花壇があって、1年に一度、3月頃に、植木屋さんに頼んで、スミレ、水仙、チューリップやいろんな花を植えてもらう。そして春には、色とりどりの花が咲き乱れる。年に一度のぜいたくだ。しかし、花が咲いても誰かを呼ぶわけではない。アパートの上の階の人や、通りかかりの人が見て楽しむだけだ。私もそれを見て、父や母が居た頃を思い出すのが楽しみで、毎年忘れずに行ってきた。
わたしは、自分の父が残してくれた財産のアパート、田舎の家を売って、生活してきた。今住んでいる家も、所有者が別に居て、わたしが死ぬと、その人が受け継ぐ。わたしは死ぬまで自分の家に住んで、ぜいたくではないけど生活費も銀行から下りる。このことを、ヌーダ・プロプリエタ、裸の所有者と呼ばれている。まさに死んだ後は裸になってしまう。
近所の市場に出かけた。市場では、いつも同じバンコ(店)のオジサンから野菜と果物を買う。シャンピニョン、トマト、カリフラワー、レモン、白いリンゴ、洋なし、など、ほとんど1週間分を買いだめする。今日は、トルタを作る。市場の商人は、ほとんどがアラブ人に決まっている。でも、よく探せばイタリア人も何人か居る。わたしのひいきのこの店も、生粋のイタリア人夫婦がやっていて、売っているものについては、味もよく、信用できる。ただ、少しばかり計算が弱いのか、わざとなのか、お金を間違える。普段は多く間違えるから、やっぱりわざとだと思う。だから、野菜を計りに乗せるたびに、いくら?と聞かなければいけない。もう、10年近くつきあっている。
買ってきたシャンピニョンとほうれん草、それにリコッタチーズで塩味のトルタを焼く。午前中にすばやく済ませ。午後に病院のエンニーノ医師に渡すつもりだ。
ようやく、土曜の午前中にやってくる雑用を済ませ、午後の早い時間に外出する。わたしはこのエンニーノをひそかに恋している。わたしは82歳で独身、医師は40歳で、妻子がある。(登場人物は全て架空)
posted by perabita at 03:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする