2011年12月26日

無意識なノーマル・デザイン

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昔からの友人が、メリークリスマスの返事に、この150年間に東京のファミリーがどんなになって来たかを調べたり、考えたり、しているとあった。では、お前は何を考えているのか?と、聞かれてはいないけど、こんなことを考えている。
この1年は、キッチンやバスの排水や排水部分のデザインをした。手で、押したり、まわしたり、なにかと手と関係するデザインを考えてきた。それは手で握ったり、まわしたり、指で押したりするもので、形のデザインというよりも、手が作り出すデザインというものであろうか。
その代表的なデザインは、ドアの取手だ。私は、このミラノで5年生活してきた。ミラノ中の玄関ドアの取手を知っている。少しオーバーだけど。いろんな形がある。はじめの写真ものは、かなり伝統的なスタイルで、握って回すときに、滑らないように突起がある。美しくデザインされていて、これならクラシックな扉にも調和する。そして次は、ルネッサンス時代のパラッツオにあった勝手口の取手だが、1930年代に改修されているので、たぶんその当時のものであろう。丸ではなくて、四角まるだ。握って回しやすくなっている。
これらの形やデザインは、Super Normal(Naoto Fukasawa & Jasper Morrison)と言われたものの範囲にはいるようだ。しかし、私にはこのSuperは必要がなく、ただのNormalで良い。この形は誰かがデザインしたものではなく、たとえデザインされたとしてもアノニマスな部類と考えてさしつかえない。時代を経て、出来上がったもので、無意識のデザインだ。もちろん、これらの取手は、工業製品であって、大量に生産されているのだが、現代まで引き継がれてきたデザインといえよう。ヨーロッパは、さまざまな文化や人種が入り乱れているためか、この無意識のノーマルなデザインがそこら中に見ることができる。

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Super Normalの表紙の写真にあるビアレッティのコーヒーわかし。私の家には、3個ある。この3個、どうも作られた時代が違い、微妙にデザインが違っている。右端が、たぶんもっとも古く、1950年以降か?真ん中は1980年代?左が数年前に買った現代のもの。右のものは、下の6角形の辺が、カーブしてへこんでいる。上部も10角形でわずかにへこみがある。これは、コーヒーを入れたり、水を入れたりするには、次の写真のように、左手で下部分、右手で上部分を握って、左に回すと二つに分かれる。このへこみがあると、指が角に容易にひっかかり、まわすのに力が入れやすくなっている。中央は、その過渡期で、下は前と同じくへこんでいるが、上部は6角形で、へこみがない。そして、現代のものは、へこみが無く平らだ。なぜ、この美しい曲面の形を平らに変えてしまったのか?製造上の問題か、ミニマリズムの影響か?不明だ。
まあ、とにかく、手がつくりだす無意識のノーマルなデザインを考えたい。ビンの蓋や、フォークナイフの柄やナットネジやハンドル、ワインオープナー、ハサミ、昔のラジオのプッシュボタン、面白いところでは、昔のひげそりのための石鹸あわをつけるはけ、まあ世の中にはたくさんある。手が作り出した無意識のノーマル・デザインを考えたい。当面これが、私の研究テーマだ。
タグ:デザイン
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2011年11月26日

ラムスのデザインとドイツのデザイン賞

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(Less and More The Design Ethos of Dieter Rams)

最近、ディター・ラムスDieter Rams(1932-)というデザイナーの展覧会のカタログ「Less and More」を入手した。この本は何と800ページもあって、ほとんどラムスの作品集といって良いほどだ。このラムスは、ドイツ生まれで、電気製品で有名なブラウンに1961年から1997年まで、全製品の半分くらいをデザインしていたという。そういえば私が昔使っていた電気ヒゲそりも彼のデザインによるものだったことが、わかった。いわば、ドイツデザインを作り上げた人だ。ドイツデザインは、建築の分野では、20世紀の前半は時代の最先端を行っていた。ベーレンス、バウハウスのグロピウス、ルドルフ・スタイナー、リートフェルト、マルセル・ブロイラー、ミース・ファンデル・ローエなど、近代建築史の先駆者たちだ。その流れも、当然このラムスに引き継がれている。彼のデザインの対象は建築ではなく、小さな電気製品で、当時、世に出はじめた、ラジオ、ステレオ、レコードプレイヤーなどだ。どのプロダクトも、つまみや表示がシンプルにクリーンにデザインされている。プッシュボタンも押す機能が見てわかり、まわすつまみとの区別もされている。多くは円を多用し、コーナーもRがついていて、現代のiフォンのデザインまで、そのセンスがつながっているようでもある。
このラムスのグッドデザインのポリシーは10ヵ条あって、非常に興味深い。
Ten Principles of Good Design
1. Good design is innovative. グッドデザインは革新的、発明的。
2. Good design makes a product useful.グッドデザインは実用的。
3. Good design is aesthetic.グッドデザインは美的。
4. Good design helps to understand a product.グッドデザインは説明なしで理解できる。
5. Good design is unobtrusive.グッドデザインは目立たない。
6. Good design is honest.グッドデザインは正直。
7. Good design is durable.グッドデザインは耐久性がある。
8. Good design is consequent to the last detail.グッドデザインは最後のデティールまで一貫している。
9. Good design is concerned with environment.グッドデザインは環境に配慮している。
10. Good design is as little design as possible.グッドデザインは可能な限りシンプル・
Back to purity, back to simplicity! バックはクリアーでシンプル!

これらのデザインポリシーは、非常に機能主義的である。つまりそれは、ドイツデザインの本流となるもので、「機能的なものは美しい」、という大前提がある。とくに、1,2,3はまさに、機能主義そのものだ。そして、この本のタイトル、Less and MoreはミースもLess is moreをもじったもので、シンプルと豊かさ、と訳すべきか。ラムスのポリシーは、Less but betterとなっている。これは、シンプルだけどより優れたもの、ということ。この機能主義に加えて、4から10までは、ミースのLess is moreに触発されたものと考えられる。今でいうミニマリズムとは違って、当時の全盛だった、モダニズムそのものだ。ドイツデザインがまさにモダニズムの先頭を切っていた時代のポリシーがそのまま、ラムスのグッドデザインの考え方に生かされている。また、ラムスは、形態と内容の関係について追及し、内部と外部の調和に配慮した。これは、非常に古典的なモダニズムの考え方で、ドイツ的と言える。グッドデザインは正直だ、というのに該当している。また、デティールは、単なるデティールではない。このデティールがプロダクトに命を吹き込む。それは、ミースの建築と同じだ。そして、非常に良いことを言っている。To design is to think、デザインすることは考えることだ。まさにそうだ。

これまで進めてきたプロジェクトで、私たちの製品は大手シンク会社から2011年の新製品として発売にこぎつけることができた。その製品を、Red Dot Product Design Award 2012の応募することが決まった。このデザイン賞は、1954年からはじまったドイツのデザインコンクルーだ。驚いたことに、そのデザイン賞の審査基準が、ほとんどこのラムスの10ヵ条と同じではないか。革新、発明の度合い、機能性、人間工学、説明性、形態の質、エコロジー、耐久性、シンボリックで感性的、製品の周辺、となっている。当然、ドイツのデザイン賞だから、ドイツのデザインの流れをくんでいる。そして、ラムスのブラウンのデザインがドイツを代表するデザインだから、ラムスのデザインポリシーがそのまま受け継がれるのは、ある意味で当たり前のことなのだ。
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2011年03月04日

今年の流行、ファニー・ファッション

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ミラノはファッション・ウイークだった。そういうことで、昨日は私のブログに顔写真がのっているジュエリー作家のパトリツィアがあのモンテナポレーネの毛皮店で自分のジュエリーを展示販売するという。見に来てというから、周辺の今年のファッションをついでに見て回った。最初の写真は、左がパトリツィアで右が毛皮店ヴォルピのオーナー、しているネックレスは彼女の作品だ。
そこで面白い話を聞いた。毛皮店の共同経営者が、ニューヨークに行ったけど、入国拒否されたというのだ。理由は、パスポートに入国のスタンプを押すスペースが残っていなかったから、だという。ルールで重なって押してはいけないらしい。彼は、年中世界中を飛び回っているから、全頁がスタンプで埋まっていたのだそうだ。気をつけよう。

今年のファッションは、景気が回復?してきたこともあって、その喜びを表現して、オモシロ・オカシイデザインが流行している。私は、勝手にファニー・ファッションと名付けた。別に、洋服が少しばかり変でも、このミラノでは頭が変だとは誰も思わない。だから、ファニーの方が、明るくて、元気があって、うわー景気が良くなったぞ、という気持ちが表れていていいかも。そのオカシな具合を見てみよう。

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最初は靴の名門セルジオ・ロッシのものだが、むれなくて良いかもしれない。その次はミュミュで、3色色違いが良いかも。でもちょっと分裂症的デザインが気になる。

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これは、和服の変形。着物洋服とでも言うのか?夜はこれでも着て、ゆったりと過ごすのも良いかもしれない。間違って外に出ないように気をつけよう。そして、モスキーノ作、ふろしきバッグ。これは良いアイディアで、ニッポンで流行るのでは。最後はD&Gの蓑服。手でよったような紐状のものが何となくきたならしい。雨の日に着れるように防水になっていると良かったのに。

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そして紐ファッション。はじめはロベルト・カヴァッリで、なんでバッグにこんなに紐が必要なのか分からない。そして、洋服も紐だらけ、紐のレースだ。こんなだと、紐がからまって、着るのに時間がかかると思うけど。

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あとは見ての通り、男がこんなズボンはくの?ズボンの上から下着をきるの?最後は、ゲラルディーニのバッグだけど、これ何のデザイン?鍵穴?もやしの頭?わかりませーん。
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2011年02月22日

演奏会の後は、ウインドー・ウオッチング

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昨日は月曜日、いつものサラ・プッチーニで、若い新人のコンサートに行った。バィオリンのレイラさんとピアノのクラウディオさんだ。曲目はモーツアルト、ベートーベン、ドビッシー、サンサーンで、ドビッシーが最もよかった。その音楽は、絵画の印象派的で、色とイメージが湧き上がり、音楽というよりも音で描いた絵画かもしれない。ヴァイオリンの独奏はどうしても、その楽器によって音が作られてしまう。レイラさんのヴァイオリンは、迫力は無いが、高い音域が非常に繊細で美しかった。Claude Debussy(1862-1918) Sonata Allegro vivo Intermede.

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この演奏会場まで行く途中のモンフォルテ通りには、照明やキッチンメーカーがいくつかあって、演奏会の後、夜のウインドーをのぞいた。
これはアルテミデの照明で、アクリルに色がついて、突起がいっぱいあって、影を作り、さまざまに反射する。アクリは一枚の板が自由な曲面をつくって立体となっている。

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これはフロスという照明メーカーで、ジャスパー・モリソンのデザインの照明があった。形は何ということのないレトロなものだけど、微妙な局面とやさしい色が良い。ひっくりかえって、ミカン入れになっていた。

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そしてアルクリニアというキッチンメーカー。厚い人工大理石のキッチンカウンターとテーブルが一緒になっていて、調理器具の棚、フードが中央にあるアイランドタイプのキッチンだ。非常に重量感がある。

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建築家パオロ・リザットの照明器具が展示してあったが、その下の家具が彼のデザインになるものかどうかわからない。
どの展示も今年の新作なのだろう。どのデザインにも、もうミニマリズムの片鱗を見ることが出来なかった。たぶん今年のサローネは、ミニマリズムを脱した新しいデザインの動きがあるように予想される。楽しみだ。
タグ:デザイン
posted by perabita at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | デザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月15日

ドアノブの旅(初回)

実は私はデザイナーだった。もちろんミラノに来る前で、しかし前職ではついにデザイナーとして力を発揮することが出来なかったというのが本当の所だ。今どきのニッポンでは、デザイナーはデザインする人ではなくて、マネージする人というのが一般的だ。
だが、この地で、水回りの仕事をするようになって、どうしても、デザインが必要になってくる。このイタリアの、お風呂やキッチンのメーカーは、死ぬ思いでデザインに力を入れている。そういう世界に割って入っていくためには、こちらも死ぬ思いでデザインに取り組まないと、相手にしてもらえない。
だったら、もう一度デザインの勉強をしてみようと思い立った。そこでデ・フスコという人が書いたイタリアデザインの歴史という本を買って見たが、椅子やテーブルや車のデザインが中心で、私が必要としている、小物のデザインにはほとんど触れられていない。確かに無名のデザインかもしれない。私の興味があるのは、手で押したり、回したり、引いたり、握ったりのデザインだ。手の延長上にあるもので、この世にはたくさん存在するが、意外にもデザインの歴史には取り上げられていないけど、デザインされているし、デザインの時代の流れにも沿っているような気がする。
また、このミラノは、世界のどこの都市に比べてもデザインで食べてきたという経緯がある。たぶん有名デザイナーも世界一多い。街を歩いても、電車に乗っても、デザインされているものにお目にかかることが多い。しかも今世紀の初めから、モダンデザインの生きた教科書と言っても過言ではない。
ということで、最初に注目したのはこのドアノブだ。ドアノブの年代を特定するのは難しいが、多くは建物の建設時代と同じ時代で、しかも同じ建築家がドア、フェンスを設計したものがまだ残っている。特にファシズム時代のものが面白い。先日、歩いたものからいくつか紹介する。

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これは、ファシズム時代の建物で、隣が1936年建設とあるから、ほぼ同じ時代のもの。このパラッツォの玄関には、円がデザインされている。○がこの建物のデザインモチーフになっているようで、玄関ドアに真鍮の球が挟まっていて、その中央に鍵穴がある。このピカピカの球を押すと鉄のドアが開く。たぶん傑作中の傑作。

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同じファシズ時代と思われるデザインで、押し手と引手を兼ねたものだ。このヴァリエーションは多く、そのなかでもグッドデザイン。

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この2つは、多く見かけるタイプで、たぶん、既製品のドアノブで、いつの時代まで作られていたか興味のあるところだ。押す機能だけで、掴んで回すことは無いと思われる。

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この楕円の変形した形はめずらしい。こういう形だと、握るのも楽しい。握りたくなる。さて、これらをどこで採取したか?もうわからなくなっている。データとして通りと番地は記録する必要があるな。また、ドアノブの旅に出たい。
タグ:ドアノブ
posted by perabita at 07:30| Comment(0) | TrackBack(0) | デザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする